第178章 甘い口づけ

「彼女は俺の妻だ! 野口颯汰! お前、何をしてる!」

不意を突かれた野口颯汰はその拳をまともに食らい、口元が一瞬で紫に染まった。唇の端から血がにじみ、つうっと落ちる。

だが野口颯汰も怯まない。金縁の眼鏡の奥、鋭く危うい眼差しを細めて言う。

「見てのとおりだろ」

「てめぇ……!」

黒谷優の手がぎゅっと握り締められる。今にも飛びかかりそうな気配。

その前に、南坂海乃が両腕を広げて野口颯汰をかばった。

「もういい加減にして。あんた、また何の癇癪? 私と先輩がどうしようが、あんたに口を出す権利はない」

その光景は、黒谷優の目を容赦なく刺した。

握った拳が、きつく……そしてゆるむ。最...

ログインして続きを読む